【SharedArrayBuffer is not defined】を【.htaccess】で解決する

Web 開発中に「SharedArrayBuffer is not defined」というエラーに出会った経験はありませんか?この記事では、エラーの原因となる仕組み、そしてその解決方法について詳しく解説します。初心者の方でも理解できるよう、用語の説明や設定方法、実際のコード例も紹介しますので、ぜひ最後までご一読ください。
1. エラーの概要
1.1 SharedArrayBuffer とは?
まず初めに、SharedArrayBuffer について理解しましょう。
SharedArrayBuffer は、JavaScript の一種のオブジェクトで、複数のスレッド間でバイナリデータを共有できる仕組みを提供します。
- バイナリデータ:画像や音声、その他の非テキストデータを表現する形式。
- スレッド:プログラム内で同時に動作する処理の単位。JavaScript では Web Workers を使って並行処理が可能です。
Web アプリケーションで高パフォーマンスを求める場合、メインスレッドとバックグラウンドで動作するワーカー間で効率的にデータをやり取りする必要があります。そこで SharedArrayBuffer が利用されますが、セキュリティ上の理由から使用するための条件が厳しくなっています。
1.2 エラーが発生する原因
「SharedArrayBuffer is not defined」というエラーが表示される場合、ブラウザが SharedArrayBuffer を有効にしていないか、あるいは正しいセキュリティ設定がなされていない可能性があります。
このエラーが出る主な理由は、クロスオリジン分離(Cross-Origin Isolation) が有効になっていないことにあります。
2. クロスオリジン分離 (Cross-Origin Isolation) とは?
2.1 用語の定義と背景
クロスオリジン分離 は、ブラウザのセキュリティモデルの一部です。ここで使われるいくつかの用語について説明します。
- オリジン(Origin)
オリジンとは、プロトコル(http, https)、ホスト(ドメイン名)、およびポート番号の組み合わせのことです。たとえば、https://example.com:443 は一つのオリジンです。 - クロスオリジン(Cross-Origin)
異なるオリジン間のリソース共有や通信を指します。Web セキュリティ上、異なるオリジン間での直接のデータ交換は制限されるため、制約やポリシーが設けられています。 - 分離(Isolation)
異なるオリジン間のリソースやスクリプトが干渉しないように隔離する仕組みです。
2.2 なぜクロスオリジン分離が必要なのか?
SharedArrayBuffer を利用すると、メモリの共有が可能になるため、高速な並行処理が実現できます。しかし、この仕組みは悪意のある攻撃(たとえば、メモリの不正読み取りやサイドチャネル攻撃)に悪用されるリスクがあります。
そのため、ブラウザは SharedArrayBuffer を有効にする際に、通信が安全な環境(クロスオリジン分離が実現された環境)であることを求めます。
3. SharedArrayBuffer を利用するための条件
3.1 必須の HTTP ヘッダー
SharedArrayBuffer を利用するためには、Web サーバーが以下の HTTP ヘッダーを正しく送信する必要があります。
- Cross-Origin-Embedder-Policy (COEP)
- 設定例:Cross-Origin-Embedder-Policy: require-corp
- 解説:このヘッダーは、現在のドキュメントが埋め込むリソースがすべて同じオリジンまたは適切に許可されたものに限定されるように指示します。require-corp の値は、他のオリジンからの埋め込みを制限するポリシーです。
- Cross-Origin-Opener-Policy (COOP)
- 設定例:Cross-Origin-Opener-Policy: same-origin
- 解説:このヘッダーは、現在のドキュメントが新たなウィンドウやタブを開くときに、同じオリジンのウィンドウだけが相互にアクセスできるようにするためのものです。これにより、異なるオリジン間の干渉が防がれ、セキュリティが強化されます。
3.2 なぜこれらのヘッダーが必要なのか?
これらのヘッダーを設定することで、以下のようなメリットがあります。
- セキュリティの向上
悪意のあるサイトからのデータ窃盗やスクリプトの混入を防ぐことができます。 - 高パフォーマンスな並行処理の実現
安全な環境でメモリ共有が可能になるため、SharedArrayBuffer を利用した並列処理が安心して実装できます。 - ブラウザの互換性の確保
多くの最新ブラウザでは、これらのヘッダーが設定されていないと SharedArrayBuffer を無効にしているため、正しい設定を行うことが必須となります。
4. サーバー側での設定方法
4.1 サーバーを立てる必要性
多くの場合、開発中はローカル環境で HTML ファイルを直接ブラウザで開いてテストすることがよくあります。しかし、HTML ファイルをローカルで直接開く場合は、HTTP ヘッダーをサーバー側から送信することができません。そのため、SharedArrayBuffer を有効にするためには、Web サーバーを立てて HTTP 経由でアクセスする必要があります。
4.2 .htaccess を利用した設定例
Apache などの Web サーバーを利用している場合、.htaccess ファイルを用いて HTTP ヘッダーを設定することができます。以下は、HTML、HTM、JavaScript ファイルに対して必要なヘッダーを送信する設定例です。
<FilesMatch "\.(html|htm|js)$">
Header set Cross-Origin-Embedder-Policy "require-corp"
Header set Cross-Origin-Opener-Policy "same-origin"
</FilesMatch>.htaccess ファイルのポイント
- FilesMatch ディレクティブ
このディレクティブは、指定した拡張子(ここでは html、htm、js)に一致するファイルに対して設定を適用することを意味します。 - Header set
サーバーからレスポンスヘッダーを送信する際に使われるディレクティブです。Header set によって、各リソースがアクセスされるたびに指定されたヘッダーが自動的に付与されます。
この設定を行うことで、Web サーバーはすべての HTML、HTM、および JavaScript ファイルに対して COEP と COOP のヘッダーを送信し、クロスオリジン分離を有効にします。
5. クロスオリジン分離が有効になった環境での確認方法
5.1 ブラウザの開発者ツールの利用
実際に設定が正しく適用されているかどうかは、ブラウザの開発者ツールを使って確認することができます。
- ネットワークタブの確認
ブラウザの開発者ツールを開き、対象のページを再読み込みします。- ネットワークタブで対象の HTML や JavaScript ファイルを選択し、レスポンスヘッダーに Cross-Origin-Embedder-Policy と Cross-Origin-Opener-Policy が含まれているか確認します。
- コンソールのエラーメッセージ
正しく設定されていない場合、コンソールにエラーメッセージが表示されることが多いです。- たとえば「SharedArrayBuffer is not defined」というエラーが続く場合、設定に問題がある可能性があります。
5.2 テストページの作成
簡単なテストページを作成し、SharedArrayBuffer が正しく利用できるかどうか試してみるのも良いでしょう。以下はテスト用のサンプルコードです。
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
<meta charset="UTF-8">
<title>SharedArrayBuffer テスト</title>
</head>
<body>
<script>
try {
// SharedArrayBuffer が定義されているかどうか確認
if (typeof SharedArrayBuffer !== 'undefined') {
console.log("SharedArrayBuffer は利用可能です。");
} else {
console.error("SharedArrayBuffer は利用できません。");
}
} catch (error) {
console.error("エラーが発生しました:", error);
}
</script>
</body>
</html>このコードを HTTP 経由でアクセスし、コンソールに「SharedArrayBuffer は利用可能です。」と表示されれば、正しく設定が反映されていると言えます。
6. 実際の利用例と応用
6.1 Web Workers と SharedArrayBuffer
Web Workers は、JavaScript のメインスレッドとは別のスレッドでスクリプトを実行できる仕組みです。これを利用することで、UI の応答性を維持しながら重い計算処理をバックグラウンドで行うことができます。
SharedArrayBuffer を利用すれば、メインスレッドと Web Worker 間でメモリを共有し、データのコピーによるオーバーヘッドを回避できます。
サンプルコード
以下は、Web Worker と SharedArrayBuffer を利用した簡単なサンプルです。
メインスレッド (index.html)
<!DOCTYPE html>
<html lang="ja">
<head>
<meta charset="UTF-8">
<title>Web Worker と SharedArrayBuffer のサンプル</title>
</head>
<body>
<script>
// SharedArrayBuffer の作成(例として 8 バイトの領域)
const sharedBuffer = new SharedArrayBuffer(8);
const sharedArray = new Uint8Array(sharedBuffer);
// ワーカーの起動
const worker = new Worker('worker.js');
// ワーカーへ SharedArrayBuffer を送信
worker.postMessage(sharedBuffer);
// ワーカーからのメッセージ受信
worker.onmessage = function(event) {
console.log("ワーカーからのメッセージ:", event.data);
console.log("更新された配列の値:", sharedArray);
};
</script>
</body>
</html>
ワーカー側 (worker.js)
self.onmessage = function(event) {
// 受け取った SharedArrayBuffer を利用
const sharedBuffer = event.data;
const sharedArray = new Uint8Array(sharedBuffer);
// 例として配列の値を更新する
for (let i = 0; i < sharedArray.length; i++) {
sharedArray[i] = i * 10;
}
// メインスレッドへ完了メッセージを送信
self.postMessage("処理完了");
};この例では、メインスレッドが SharedArrayBuffer を作成し、Web Worker に渡すことで、同一のメモリ空間にアクセスしています。ワーカー側で配列の内容を変更し、変更結果をメインスレッドで確認できるという流れです。
6.2 セキュリティ対策の観点から
SharedArrayBuffer の利用には、先述したセキュリティリスクが伴います。そのため、これらの HTTP ヘッダー(COEP と COOP)の設定は、悪意のあるサイトからの攻撃を防ぐためにも非常に重要です。
- サイドチャネル攻撃:プロセッサのキャッシュやタイミング情報を利用して、機密情報を盗み出す攻撃手法です。SharedArrayBuffer を不用意に公開すると、この種の攻撃リスクが高まる可能性があります。
- クロスサイトスクリプティング (XSS) の対策:外部サイトから悪意のあるスクリプトが注入されることを防ぐためにも、正しいオリジン管理が求められます。
これらの理由から、SharedArrayBuffer を利用する際は、必ず正しいセキュリティ設定を行うようにしましょう。
7. サーバー環境の選択と設定方法のまとめ
7.1 ローカル環境 vs 本番環境
- ローカル環境
ローカルで HTML ファイルを直接ブラウザで開く場合は、HTTP ヘッダーを設定できません。そのため、ローカル環境でテストする場合は、簡易なローカルサーバー(例:Node.js の http-server や Python の SimpleHTTPServer)を利用する必要があります。 - 本番環境
サーバー側で正しい HTTP ヘッダーが送信されるように設定する必要があります。Apache を利用している場合は、上記の .htaccess の設定が一例となります。
また、Nginx を利用している場合は、以下のような設定が可能です。
location ~* \.(html|htm|js)$ {
add_header Cross-Origin-Embedder-Policy "require-corp";
add_header Cross-Origin-Opener-Policy "same-origin";
}7.2 設定を反映させるためのチェックポイント
- HTTP ヘッダーの確認
ブラウザのネットワークタブを利用して、レスポンスに正しいヘッダーが含まれているか確認します。 - ブラウザのキャッシュのクリア
設定変更後、キャッシュが残っている場合があるため、ブラウザのキャッシュをクリアしてから再確認することが重要です。 - ブラウザの互換性
すべてのブラウザが同じセキュリティポリシーを採用しているわけではないため、複数のブラウザでテストし、問題がないか確認しましょう。
8. よくある質問 (FAQ)
Q1. なぜローカルで直接 HTML ファイルを開くと SharedArrayBuffer が利用できないのですか?
A1.
ローカルファイルとして開いた HTML では、HTTP ヘッダーが存在しません。SharedArrayBuffer を有効にするためには、COEP と COOP のヘッダーが必須であり、これらは Web サーバー経由でのみ送信できるためです。ローカルでテストする場合は、簡易サーバーを利用してください。
Q2. COEP や COOP の他に必要なセキュリティ設定はありますか?
A2.
基本的には COEP と COOP の設定で SharedArrayBuffer を利用するための環境は整いますが、サイト全体のセキュリティを考えると、CSP(Content Security Policy)や HTTPS の利用なども併せて検討することが望ましいです。
Q3. これらの設定はすべてのブラウザで必要ですか?
A3.
最新の主要ブラウザ(Chrome、Firefox、Edge など)では、SharedArrayBuffer の利用にあたりクロスオリジン分離が必須となっています。ただし、ブラウザのバージョンや設定により挙動が異なる場合があるため、ターゲットとするブラウザでの動作確認は必須です。
9. まとめと今後の展望
この記事では、「SharedArrayBuffer is not defined」 エラーの原因とその解決策について、初心者にも分かりやすく解説してきました。主なポイントは以下の通りです。
- SharedArrayBuffer の概要と利用目的
- 高速な並行処理を実現するために、メインスレッドと Web Worker 間でメモリを共有する仕組みです。
- クロスオリジン分離(Cross-Origin Isolation)の重要性
- セキュリティリスクを軽減し、安全に SharedArrayBuffer を利用するために必須です。
- 必要な HTTP ヘッダー
- Cross-Origin-Embedder-Policy: require-corp
- Cross-Origin-Opener-Policy: same-origin
これらのヘッダーは、Web サーバーから送信される必要があり、ローカル環境で直接ファイルを開いても反映されません。
- サーバー側の設定方法
- Apache の場合は .htaccess、Nginx の場合はサーバー設定ファイルに記述します。
- ローカルテスト時は簡易サーバーの利用が推奨されます。
- 実際の動作確認と応用例
- 開発者ツールを用いて HTTP ヘッダーの確認を行い、テストページを作成して SharedArrayBuffer の動作を確認します。
- Web Worker との連携例を通して、実際の利用方法もご紹介しました。
今後、Web アプリケーションの性能向上とセキュリティの両立はますます重要になっていきます。SharedArrayBuffer を始めとする新しい機能は、適切な設定を行うことで、安全かつ効率的に利用することが可能です。エラーが発生した場合でも、本記事の知識を活用して迅速に対応できるようになるでしょう。
10. おわりに
Web 開発は日々進化しており、セキュリティの要求も高まっています。SharedArrayBuffer のような強力なツールを安全に使うためには、正しい設定と知識が不可欠です。
今回解説した クロスオリジン分離 に関する知識や、HTTP ヘッダーの設定方法は、最新のセキュリティ対策として非常に重要です。
初心者の方でも、この記事を通して基本的な概念や実装方法を理解し、実際の開発現場で役立てていただければ幸いです。
また、Web 標準やセキュリティの分野は常に新たな知見が発表されています。常に最新の情報にアンテナを張り、定期的なアップデートを行うことで、安全で高性能な Web アプリケーションの開発が実現できるでしょう。
最後に、もし設定に関する疑問や実装で詰まった場合は、公式ドキュメントやコミュニティフォーラム(Stack Overflow など)で情報収集することをおすすめします。知識を深めることで、より良い開発環境とセキュアなシステム構築が可能となります。
【参考資料】
- MDN Web Docs: SharedArrayBuffer
- MDN Web Docs: Cross-Origin-Embedder-Policy
- MDN Web Docs: Cross-Origin-Opener-Policy
- Google Developers: Cross-Origin Isolation
以上で、「SharedArrayBuffer is not defined」 エラーの解決策と、その背景にある仕組みについての解説を終わります。初心者から上級者まで、どなたでも参考にできる内容となっていることを願っています。安心して SharedArrayBuffer を利用し、効率的な Web アプリケーション開発にお役立てください。

